口臭について
口臭の原因は、ほとんどは口の中にある
あるとき、家内から「あなた息が臭いわよ。胃が悪いんじやない」と指摘され、子どもたちからは「パパロが臭い、あっちへ行ってよ」と言われたことがあります。家族ですから、遠慮しないで正直に言ったのでしょう。
「そうかい…」と言って平静さを装ったものの、内心かなり傷つきました。
これが他人からの指摘だったら、もっと落ち込んでいたことでしょう。
この短い会話のなかに、いくつかの間題点があります。
まず胃の病気が口臭の直接原因と一般的に言われているのは誤りです。よほど病気が進行していなければ、そんなことはありません。迷信のひとつと言ってもいいでしょう。
口臭のほとんどの原因は口の中にあります。ですから、その原因を除去し、的確な対策を行い、自分の生活習慣の中に取り入れれば、口臭は容易に軽減します。
次に他人の口臭を指摘することの是非とタイミングについてです。 家族や親しい友人からの指摘は、むしろ愛情・友情として歓迎すべきことかもしれません。
口臭があるのに、自分で気がついていない人が意外と多いからです。自分の口臭が気になる人20パーセント、他人の口臭が気になる人80%、というデータがありますが、このようなデータから見ても、自分に鈍感、他人に敏感な現象が現実にあります。
私自身、他人の口臭が気になったとしても、診療室以外では、それを言葉に出して注意することはなかなかできません。勇気のいることです。しかし、タイミングよく、言葉を選んでやさしく声をかけてあげれば、言われた本人も悪い気はしないと思います。冒頭の私の子どもの場合、言葉がストレートすぎて、いくら家族でも配慮不足だと思います。
近所の喫茶店にトイープードルのとても可愛い犬がいます。皆の人気者で、扉を開けると嬉しそうにしっぼを振りながら走り寄ってきます。客がコーヒーを飲むと、自分にもと主人に訴えミルクを飲みます。
ある日、あまり可愛いので顔を寄せ、この子大とコミュニケーションをとりました。そのとき感じた口臭の強さに、思わず顔をそむけました。歯科医としての職業意識が働き、原因は何かと探ることにしました。大にも歯周病があるのはご存じでしょう。歯には歯石がつき、舌も汚れていました。そうです。この子犬の口臭も人間の場合と似た病因だと感じました。
北海道の函館歯科医師会は1998年4月より「口臭さよなら宣言」のキャンペーンを始めました。その目的は、古くて身近なテーマである口臭を取り上げることで、その原因や治療法を理解してもらうことと、二義的には共同作業を通して、患者さんと歯科医の距離を縮めることにありました。スーパーや薬局で若者を中心に口臭対策グッズやデオドラント商品がよく売れていることもヒントになりました。テレビやラジオで広報活動を行い、ポスターには「あなたの息をフレッシュにします」のコピーをつけました。
同年6月6日、市内のスーパーで開催された「歯の衛生週間」の行事には、「口臭さよならキャンペーン」が効果的だったのでしょう、多くの市民が来場し大盛況でした。また、会場で口臭測定を行ったところ、市民の関心は大変高かったとのことです。
歯の美白と口臭治療
ここでアメリカに目を向けてみましょう。
アメリカの審美歯科学会に10年以上連続して参加し、その動向に注目をしてきました。審美歯科は日本でも、松田聖子さんの結婚相手が審美歯科の歯科医だったことを機に一躍有名になりましたが、この分野の先進国アメリカでは、1980年代に入り大変盛んになり、歯科医療の主流になっています。
審美歯科とは、美学の歯科医学への適用を言いますが、もっと具体的に言えば歯、口腔、顎、顔面の形や色、機能の美しさを再現させることが目的の歯科医療です。
学会の発表のなかに近年目立ってきたのが口臭のテーマです。なぜ口臭が審美歯科なの? と思われるでしょう。対人関係を大切にし、キスの習慣のあるアメリカでは、さわやかな息すなわちフレッシュ・ブレスこそ、 「見えない審美」として、いま歯科医の間に話題を呼んでいます。口臭治療を行う歯科医院もどんどん増えています。
もうひとつの魅力あるテーマである「歯の美白」と共に「口臭治療」は息の長いブームを続けています。
こうした傾向は日本にも入ってきました。
これからの日本の歯科医療は、従来の痛いから治す、抜けたから入れる、穴があいたからつめるというパターンから、生活の質の向上や人びとの幸福にかかわる快適さを求める方向へ変わっていくでしょう。治療から予防へと歯科医療が方向転換をしているとも言えましょう。
98年4月には日本歯科人間ドック学会加誕上しました。この学会の目指すものは、患者さんを主体にした予防医学の実践です。「治療医学」から「予防医学」、そして「未病医学」さらに「幸福医学」にまで進めていくのが目的です。歯科ドックの検査メニューのなかにも口臭測定が用意されています。
口臭とは
そもそも口臭とは何でしょうか。改めてここで医学的に定義づければ 「呼吸や会話の際、息が他人にとって不愉快に感じられ、悪臭と判断されること」です。
人間も生き物ですから、多少は息がにおっても当然とも言えましょう。身体のメカニズムの中で、口は活発に休みなく働く工場の役割をしています。呼吸をし、言葉を発し、飲んだり食べたり咀閣にかかおり、歌も歌えば楽器も吹く、愛情の表現さえ行います。生命体にとって「始めに口ありき」であり、上きる門戸でもあります。ですから口臭は必然的に副次的に出てくるのです。確かに日臭の存在は、人間のコミュニケーションの中で相手に不快感を与えたり、良好な人間関係の障害になることがあります。
しかし、そんなに恐れたり、悩むことはありません。このサイトをよく読んで、口臭の実態とその対策を理解していただきたいと思います。
口臭チェック~チューブテスト
※このテストには協力者が必要です。家族や友人など、気楽に頼める人に協力してもらいましょう。テストは、歯磨きする前、そして、食事をする前に行います。
- 直径が約1センチ、長さ約30センチのチューブと、A4版くらいの厚紙を一枚用意します。チューブは、庭の水まきをするホースなどで代用してもかまいません。
- 厚紙の中央にチューブと同じ大きさの穴を開け、チューブを通します。厚紙の中央にチューブの真ん中がくるようにします。
- 厚紙をはさんで、片方にあなた、もう片方に協力者が立ち、それぞれチューブを持ちます。
- 準備が整ったところで、あなたは協力者にひと声かけ、深く息を吸ってチューブから息を吹き入れます。
- 協力者は、チューブから流れてきた息のにおいをかぎます。
-
協力者に率直な意見を聞いてみましょう。
口臭チェック~コップテスト~
このテストは、歯磨きする前、そして、食事をする前に行います。
- きれいに洗ったコップを1個用意します。
- コップを上下左右に少し振って、中の空気を入れ換えます。
- 深く息を吸い、コップの中に「パーツ」と息を吐き出します。
- 少し時間をおき、コップの中のにおいをかいでみましよう。
- 鼻をつくようなにおいがあれば、口臭が強く出ている可能性があります。
自分で簡単にできる口臭テスト
複数のテストを試してみて、はたして「口臭が強い」のかどうか、自分の口臭レベルを把握しておきましょう。
口臭チェツクリスト
該当項目が5つ以上ある人は、口の中の病気による口臭が強くなっている可能性があります。
- 歯磨きをすると出血する。
- 歯ぐきが赤くはれている。
- 歯肉を押すと膿が出る。
- 歯と歯の間に食べ物がよくはさまる。
- 歯が浮く感じがする。
- グラグラする歯がある。
- 寝るときに入れ歯をはずさない。
- 舌苔がたくさんついていて、舌が白い。
- 口がよく渇く。
- 口の中がねばねばする。
- 口の中がはれる、口内炎がよくできる。
- 唾液の中に血や膿が混じることがある。
- 歯ぎしりをする。
- 冷水がしみる。
- 痛い歯がある。
- 大きなむし歯が4本以上ある
- 食後に歯磨きをしないことがある。
- デンタルフロスや歯間ブラシなどで、歯と歯の間を掃除していない。
- 次のような病気にかかっている(蓄膿症、慢性鼻炎、気管支炎、胃炎、胃かいよう、胃下垂、糖尿病、尿毒症、悪性貧血)。
- 生活が不規則だ。
- 偏食があったり、食事が不規則だ。
- ヘビースモーカーである。
- 仕事や家族、友人のことなどで、今、悩んでいる。
-
人から口臭を指摘されたことがある。
自臭症と他臭症はここが違う
これまで、口臭の種類やその原因となるものを説明してきましたが、もうひとつ、説明しておきたい間題があります。
それは「口臭と心」の関係です。
口臭を訴える人の種類を、心理的な面で区分けすると、次の2つに分類されます。
- 他臭症
- 自臭症
「他臭症」は、明らかに口臭の原因があり、他人にもそのにおいを感じさせる口臭です。
「自臭症」は、調ぺてみても口臭の原因はなく、他人もにおいを感じないのに、自分は口臭が強いと思い込んでいる状態です。
他臭症
今まで述べた「病気による口臭」が認められ、その原因として歯科、内科、耳鼻咽喉科などで病気の診断がつくものです。
自臭症
口の中を調べてみても、歯垢や歯周病、むし歯も見当たりません。全身の状態も健康で、どこも治療をする必要はないのに「自分には強い口臭がある」と思い込んでいる人が、最近、増えています。
並んで歩いて話していたときに友人がふと鼻に手を当てた、恋人がキスをしてくれないなど、周りの人の何気ない態度や物腰、様子などから自分に口臭があると思い込み、ついには対人恐怖症や社会的な不適応を起こしてしまうこともある、というものです。
自臭症の患者さんは、口の中や全身に口臭の原因となる病気があるわけではないので、いくら歯科医が口の中を洗浄し、「もう大丈夫ですよ」と大鼓判を押しても、効き目はありません。「神経質なだけですよ」「気にしすぎですよ」「口の中は本当にきれいです。口臭なんかありませんよ」そう歯科医にいわれても、本人は納得しません。
自臭症は、別名「心因性の口臭」とも言われます。残念ながら、日本では自臭症に対する治療法が進んでいません。患者さんの悩みに真にこたえられる歯科医も多くありません。
「心の問題だから」といって、精神科の受診だけをすすめる歯科医もいます。
しかし、最近、自臭症の治療に積極的に取り組む歯科医師や医師も出てきました。
心因性の口臭を訴える人には、心と体の相関関係に気づき、毎日の生活の中で、自分の力で症状や病気をコントロールできるようになるよう、医師が援助していくことが大切なポイントになります。
そのための治療法としては、簡易精神療法、薬物療法、自律訓練法、暗示療法、音楽療法、行動療法、交流分析療法、家族療法、温泉療法、座禅、ヨガ、瞑想、気功法などたくさんの種類があり、患者さんの症状や性格に合わせて、いくつかの治療法が組み合わされます。
そして、自臭症の人に対しては、口臭が改善したかどうかが間題ではなく、健康的な社会生活が送れる上うになったかどうかが、治療効果を見る際の判断材料となります。
先述した「ガスクロマトグラフィー」や「ハリメーター」などの口臭を測定する機器で、実際に自分のにおいの数値を測ってもらい、客観的ににおいのデータを提示されるだけで、「自分の口臭は基準値並みだったのだ」と安心し、納得する患者さんも多いのです。
また、歯磨きの努力を重ねて口臭を克服していく過程を、磨き残しの有無を目で直接確かめ、その裏付けを確認しながら実行していくことで、改善されていくこともあります。
自臭症の8~9割は、医師との2人三脚で治るといわれています。「口臭が強いのではないか」という悩みがあるときは、一人であれこれ思い悩まずに、まずは歯科医を受診することをおすすめします。
意外な口臭の原因~薬が原因になることも~
また、口臭の中には、治療薬が原因となるものもあります。
たとえば、大腸の病気の治療には「抗コリン薬」という薬が使われることがあります。この薬は、唾液の分泌量を少なくし、口が渇くという副作用があります。
唾液の分泌量が減少すると、口臭が出やすくなることは先にも述べましたが、抗コリン薬に限らず、唾液の分泌が抑制される薬は少なくありません。
また、血圧を下げる降圧薬のなかでも、血管拡張作用を持つ「カルシウム措抗薬」は、細菌に対する抵抗力を抑制する副作用があり、服用を続けると歯周病が進むことがあります。
いずれも、病気の治療に必要なので処方されている薬ですから、口臭が強くなるからという理由だけで服用を止めることはできません。多少、口臭があっても、病気の治療を優先すべき場合もあるかと思います。
かかっている内科や耳鼻咽喉科の先生に口臭の悩みを相談すれば、治療にさしさわりのない範囲で、別の薬に代えてくれることもあるでしょう。
治療の必要からどうしても薬は代えられない、でも口臭が気になるという場合には、応急策として、人と会う前にうがい薬を利用したり、ガムなどをかむようにするとよいでしょう。唾液の分泌も活発になりますし、一時的とはいえ、口臭が気にならなくなります。
病気による口臭
これまで述べたように生理的口臭は誰にでもあるものです。そのにおいは他人を不愉快にさせるほど強くなることはまれですし、たとえにおいがきつかったとしても、歯磨きやうがいなどの、簡単な予防策を実行するだけで口臭を取り去ることが可能です。
また、においの強い食べ物を食べたときやタパコによる口臭も、強い口臭の原因には違いありませんが、全体的に見れば少数派です。
口臭の多数派は、これから述べる「病気による口臭」です。
病気による口臭の原因となる病気は、次の2つに大別されます。
- 口の中の病気
- 全身的な病気
このうち、8割以上が「口の中の病気」に上るものと考えられています。
口の中の病気による口臭
口の中は、たとえてみれば台所の「3角コーナー」のようなものです。
口には、毎日、いろいろな食べ物が入ってきます。肉や魚、野菜、乳製品、豆製品、イモ類、ごはん、パン、調味料、そして飲み物……。私たちが生きていく以上、エネルギー源、栄養源としていろいろな食べ物を摂取しなければなりません。健康づくりのためには、1日30食品以上のものを食ぺよう、ということも厚生省が提唱しています。
食ぺ物が、すぐに食道から胃へと送られれば間題はそう起こらないのですが、間題は口の中に食べかすが残ることです。
食べかすが残された口の中は、掃除が行き届いていない台所の三角コーナーのような状態です。三角コーナーの生ゴミは、そのまま放置しておくと、腐敗が進み、悪臭を放ちます。でも、マメにビニール袋に入れて捨ててしまえば、においません。
口の中もマメなお掃除がかかせません。
食後すぐに歯磨きをして口の中を掃除し、食べかすを放置しないように心がければ口臭を防ぐことができます。満腹感にひたって、歯も磨かず食べかすを放置しておけば、手入れを怠った三角コーナーと同じで、口の中では腐敗が進み、やがて悪臭を放ち始めます。
歯垢
食ベカスを放置しておくと、やがて歯の表面などに「歯垢(プラーク)」と呼ばれる、歯の垢が付着しはじめます。
歯の表面についた歯垢を指先でさわるとヌルヌルしていますが、その8割は細菌からできています。
歯垢のなかの細菌は、口の中にある食べかすが大好物です。食後に正しい歯磨きをせずに、磨き残しを作ると、そこについている食べかすをエネルギー源にして、細菌がどんどん増殖していき、口臭の大きな原因となります。
歯肉の炎症
1ミリグラムの歯垢の中には、約一億にものぼる細菌がいるといわれます。
膨大な数の細菌が毒素や酸素を出していますので、そのまま放置しておくと、歯肉に炎症が引き起こされます。
歯肉は、歯をおおう粘膜の一部で、「歯ぐき」といわれる部分です。ご自分の口をアーンと開けて中を鏡に写してごらんいただければと思いますが、健康な歯肉は、淡い紅色をしています。
歯肉が炎症を起こすと、赤く腫れて、出血しやすくなります。これが「歯肉炎」と呼ばれる状態です。
歯肉炎を放置しておくと、炎症は深い部分にまで広がり、ついには歯を支える骨までも溶かしてしまいます。こうなると、歯肉から出血するだけでなく、膿が出たり、歯が抜け落ちたりします。このような状態が「歯周病」と呼ばれるものです。
歯垢とともに、歯周病は口臭の原因となります。歯肉炎や歯周病は口臭の原因の8割を占めているともいわれます。
また、年をとるとともに、歯肉の病気は深刻になってきます。特に40歳以上の人は、程度の差はあれ、ほぼ全員に歯周病が見つかるといわれていますから、注意が必要です。
舌苔
歯垢、歯周病に次いで、口臭の原因となるのが「舌苔」です。
「舌に苔があるの?」
そう不思議に思う人も多いと思いますが、鏡の前で、自分の舌を「ペーツ」と出して、見てみてください。もし白い苔の上うなものが表面についていたら、それが舌苔です。舌の表面には細菌や食ぺかす、はがれた舌の粘膜など、歯垢とほぼ同じ成分の苔が付着するのです。
舌苔は舌の表面に堆積していき、細菌によって分解され、代謝の産物として悪臭を発し、口臭の原因となります。
「舌は全身の健康状態を映す鏡」ともいわれる重要な場所です。にもかかわらず、舌に注意を払う人がほとんどいないのは残念なことです。
むし歯
「口の中の病気で、口臭の原因になるものはなんですか」
そう聞かれてまず、思い浮かべるのがむし歯ではないでしょうか。でも、実際は歯垢、歯肉の炎症、舌苔に次いで4番目のランクです。むし歯が一本あるくらいで、口臭が強くなることはありません。でも、むし歯が進行して、歯の神経が死んでしまったり、むし歯がたくさんある場合には口臭が発生することになります。
歯の修復物(つめものやかぶせもの)が合っていない
むし歯を治療した差し歯やブリッジ、つめものやかぶせものが合っていないときなどは、その部分に汚れが付着して、においのもとになります。金や銀の合金を材料に使っている場合は、金属独特のにおいが出ることもあります。
また、治療がすんだ歯の周りは、健康な歯に比べて磨き残しができやすかったり、歯肉に炎症が生じやすいので、それが口臭の原因ともなります。
入れ歯のプラーク
入れ歯(義歯)の材料であるプラスチックにも特有のにおいがあります。プラスチックは吸水性を持っていますので、使っているうちに細菌が吸着しやすくなります。そのため、入れ歯の手入れが悪いと、歯垢がつきやすく口臭の原因となります。
また、汚れた入れ歯をそのまま使い続けていると、入れ歯と接触する粘膜に炎症が生じたり、周囲の歯がむし歯や歯周病になったりもします。こうなると、いつも強い口臭がするようになります。
全身的な病気による口臭
さて、これまで述ぺだように、病気による口臭のほとんどは口の中の病気が原因で引き起こされますが、口臭の10パーセント程度は、「全身的な病気」によるものです。口臭の原因となる全身の病気は、大きくは次の4つに分けられます。
- 呼吸器の病気による口臭→化膿性気管支炎、気管支拡張症、肺膿瘍、肺壊疸、肺がんなど。
- 耳鼻咽喉の病気による口臭→慢性鼻炎、副鼻腔炎(蓄膿症)、慢性扁桃炎、咽喉頭がんなど。
- 消化器の病気による口臭→食道憩室、食道狭窄、慢性胃拡張症、胃炎、胃かいよう、胃下垂、胃がんなど。
- 代謝系の病気による口臭→糖尿病、尿毒症(腎臓の糸球体の働きが低下して、ろ過が十分にできなくなり、血液中に尿素・クレアチニン・尿酸などがあふれてくる)、肝硬変、慢性肝炎など。
いずれも、代謝(体内にとり入れた物質を栄養素やエネルギーに変換するはたらき)の異常や病原菌によって、健康なときに比べて特定の物質が異常に増えたり、組織が破壊されるなどして、普通では発上しないにおいを待った物質が体内でできるからと考えられています。
全身の病気を原因とする口臭でよく知られているのが、糖尿病の人の甘酸っぱいアセトン臭です。健康な人でも血液や尿の中にはアセトンが混ざっていますが、糖尿病の場合、特にその量が多く、においとして感じられるほどになります。
また、全身の病気により代謝のバランスが崩れると、細菌を排除する力(免疫力)が落ち、その結果、歯周病が起こりやすくなり口臭の原因となります。
さらに、悪性貧血など全身の病気が原因となる口臭の場合は、内科医や、耳鼻咽喉科医ともよく相談して、歯科医との連携プレーで口臭退治に取り組んでいく必要があります。
たとえば、口臭が気になるので歯科医を受診し、歯周病の治療を受けたとします。しかし、歯周病が完全に治っても、口臭はいっこうに改善されません。
そこで、歯科医の紹介で内科の診察を受けたところ、内臓に病気があり、それが口臭の原因だったことがわかった、というケースもあるのです。
これとは逆に、内臓の病気による口臭だと考えていたら、実は歯周病であったという場合もあります。
食べ物・タバコによる口臭
食べ物による口臭
さっきギョウザを食べたんだけど、まだにおうかなあ」「私、焼肉くさくないかしら」
手を口もとに持っていき、パーツと息を吹きかけ、すかさずその息を吸ってみます。食後に、口臭が気になったという体験は誰にでもあることと思います。
においが気になる食材としては、ニンニクやネギ、ニラなどが代表的なところでしょうか。前述の「口臭についての態度、行動に関する調査」の中で、口臭から連想する語句について聞いたところ、「ニンニク」「生ごみ」「食べかす」などをあげた人がいました。
においの強い食ぺ物を口にした後に発生する口臭は、「生理的口臭」の範囲内とも言えますが、生理的口臭の原因となる唾液の分泌量とは関係がなく、におうしくみも異なります。
また、これらの口臭は、食べ物のにおいが口につくから発生するわけではありません。
食べ物が消化吸収される際に、わずかな量ですが悪臭を放つ分子が血液の中に送り込まれ、血液の中での濃度が高まります。全身を巡った血液は、肺で二酸化炭素を放出しますが、このとき、二酸化炭素と肺にまで達したにおいの分子が混じり、特有の口臭となるのです。
アルコール類を飲んだときの「酒くさい口臭」もこれと同じ原理です。二酸化炭素とともに揮発性のアルコール成分が排出され、「酒くさい息」になるのです。
食べ物による口臭は時間の経過とともに減少するので、「一時的な口臭」といえるでしよ
タバコによる口臭
「あなたの健康を損なうおそれがありますので、吸いすぎに注意しましょう」
タバコのパッケージにはこんな言葉が印刷されています。タバコはその成分が喫煙者本人とその周囲の人の体に悪影響を及ぼすだけでなく、喫煙の際にまき散らされる煙やにおいは、タバコを吸わない人にとって、実に不愉快な存在です。
タバコを吸う人と話をしていると、タバコそのものが発するにおいだけでなく、喫煙しているご本人の息が「タバコくさい」ことに気づきます。
しかし、喫煙者の多くは、自分がタパコによる口臭を持っていることに気づいていません。
長年にわたり喫煙生活を続け、ヘビースモーカーになればなるほど、タパコのにおいは自分自身にとって日常的なものとなっています。においの慣れが生じているのです。喫煙による口臭にも慣れきって、すっかり無頓着になってしまっています。
タバコから出るにおいのひとつは、タールやニコチンなど有害な物質が、口の中の舌や頬の粘膜、歯、その他の組織に付着することによります。喫煙者に多く見られるヤニに染まった黄色い歯、そしてヤニくさい息が実感できますね。
そしてもうひとつの原因が、喫煙によって口の中の粘膜が乾燥してしまうことによるものです。口の中が乾燥して、掃除役の唾液の分泌量が減ってしまうからです。
起床時の口臭(モーニングーブレス)
起床時の口臭(モーニングーブレス)
起床直後に口の中がネパネパしていて、不快に感じることがあります。
これは、夜、寝ている間に唾液の分泌が少なくなり、細菌が増殖して、口の中が汚れてしまうからです。空腹時の口臭(ハンガー・プレス)
食事をしていろいろな食べ物を食べることが口臭の原因となり、食事をしなければ口臭はないと思われる人もいるかもしれませんが、
実際はその逆なのです。
食事中は、食べ物を噛むという作業によって掃除役の唾液が活発に分泌されるため、口の中は案外きれいで、口臭もありません。
むしろ口臭が問題になるのは、食事をしていないときで、特に空腹を感じる時間帯なのです。
食後2~3時間たつと唾液の分泌量は減ってきます。その後、食べ物が口の中に入ってこない時間が長ければ長いほど唾液の分泌は減り続けます。その結果、唾液による口の中の掃除がおろそかになり、口臭も出やすくなるのです。
緊張したときの口臭
唾液が分泌される量は、からだや精神状態の影響も受けやすいのです。そのため、ストレスや緊張によっても掃除役の唾液の分泌が減少し、口臭が出やすくなります。
人前に出て何かを発表しなければならないときや初対面の人と話すとき、また、上司に叱責を受けているときなど、緊張のあまり、唾液を飲み込もうとしても、唾液自体が出てこず、口の中やのどかカラカラに渇いてしかたなかったという経験をしたことは、誰にでもあると思います。
また、スポーツや激しい運動をした後、疲れたときなども、ストレスを受けたときと似たような状態になり、唾液の量は少なくなります。
こうしたストレスや緊張が高まった状態が長引けば、口がにおうことになります。
老人性の口臭
人間は年をとるにしたがって、唾液の分泌量が減ってきます。お年寄りに「年寄りくさい」口臭が発生しやすいのは、加齢による唾液の分泌量の落ち込みで、掃除役が少なくなり、口臭が出やすくなるからです。
年齢を重ねるにしたがって口臭がきつくなる状態を「老人性口臭」と呼んでいます。
口臭とともに、このような加齢が原因となる体臭ケアも現代では必要になってきています。
妊娠時や生理のときの口臭
妊娠している女性や生理のときの女性が、たまにタマネギに似た口臭を発することかあります。これは、体内の代謝やホルモンの分
泌を含めた内分泌の影響によるものと考えられています。
排卵から48時間以内に口臭の原因となる物質の増加がみられた、という報告もあります。ただし、それが生理の周期を示すシグナ
ルなのかどうかはわかっていません。
生理周期と結びついた複雑な情報が女性の息や唾液のにおいに反映されているのでしょう。
誰にでもある「生理的口臭」
ひとくちに口臭と言っても、いろいろな種類のものがあります。まず、口臭の種類を整理しておきましょう。対策を立てるには、その正体をよく理解しておく必要があります。
口臭の種類は次の3つに大別されます。
- 生理的口臭
- 食べ物・タバコによる口臭
- 病気による口臭
先述したように、口の中には、常ににおいを発生する物質が存在しています。しかし、健康な状態ではその量は少ないので、不快な 口臭としてまで感じることはありません。こうした口臭を「生理的口臭」といいます。いわば、生きている以上、誰にでもあるもので、 治療を必要としない口臭と言ってもよいでしょう。
生理的口臭の発生には、それを左右するある共通の原因があります。それは「唾液の量」です。
唾液は、一目に1.5~2リットルもの量が分泌されています。
そして、口の中をきれいに洗い流す掃除役の機能を持っています。また、細菌や新陳代謝によってはがれた歯肉の上の皮膚細胞もきれいにするのです。
唾液の分泌される量は一日のうちで波があり、分泌量が少ない時間帯は、唾液による自浄作用が働きにくく、口臭も出やすくなるの です。